伊勢市駅を拠点に広がるこの界隈は、

伊勢一番の賑やかさ。

伊勢っ子ごひいきの味処や

おしゃれな店があちらにも、こちらにも。

旧道沿いには、お伊勢参りの名残が漂っていたり…。

伊勢神宮・外宮は伊勢市駅に程近いのに、

神域に一歩入ると、森閑とした別世界――。

多彩な伊勢の魅力が楽しめる。

モデルコース

御木本道路コース (徒歩約3時間)

外宮…市立郷土資料館…豊川茜稲荷神社…度会大国比売神社…伊我理神社…山末神社…田上大水神社…田上大水御前神社――内宮

旧参宮街道コース (徒歩約3時間)

外宮…月夜見宮…伊勢和紙館…小西萬金丹…等観寺…法住院…筋向橋…草奈伎神社・大間国生神社…伊勢銀座新道商店街…近鉄・JR伊勢市駅

神様の食事をつかさどる―――

伊勢神宮・外宮(げくう)(豊受大神宮(とようけだいじんぐう))

伊勢市駅から五分ほど歩くと、こんもりとした杜につき当たる。ここが伊勢神宮の外宮で、祭神は豊受御大神。内宮の鎮座より約五百年あとの雄略天皇の時代に、天照大御神(あまてらすおおみかみ)の大御饌(みけ)(食事)を司る神として丹波の国から伊勢の国に迎えられた。

 米づくりをはじめ、衣食住すべてに関わる産業の神さまだ。

 神域には正宮をはじめ、別宮三社、摂社、末社、所管社などがあるが、内宮ほど広くはなく、参拝の所用時間は四十分ほど。内宮とは六キロほど離れているが、外宮から内宮へと続けて参拝する「両宮参り」が正式である。

● 近鉄・JR伊勢市駅から徒歩5分
● 伊勢市豊川町 TEL0596・24・1111(神宮司庁)

◆外宮めぐりのおすすめ参道

火除橋(表参道)→手水舎→清盛楠→正宮→多賀宮→下御井神社→御厩→度会国御神社→大津神社→火除橋(北御門)→勾玉池→度会大国玉比売神社→伊我理神社→山末神社

清盛楠

 表参道の手水舎の前にどっしりと構える楠の大木。二本のように見えるが一株で、樹齢は八百年の古木である。平清盛が勅使として参向した時に、冠に触れた枝を切らせたとの伝説からこの名が残る。

神楽殿(かぐらでん)・神札(おふだ)授与所

 二の鳥居をくぐってすぐ右側、隣あって建つ。神楽の申し込みや、御神札・お守りなどの授与をここで取り扱っている。

四至神(みやのめぐみのかみ)(所管社)

 外宮宮域の四囲を守る神。五丈殿、九丈殿が建つ広場(大庭(おおば))に小さな石畳があり、一本の榊の木と三つの石が並んでいる。

正宮(しょうぐう)

 内宮と同じく、一般の参拝は外玉垣南御門の前で。社殿は「唯一神明造(ゆいいつしんめいづくり)」だが、棟の上の鰹木(かつおぎ)が九本、屋根の両端にのびる二本の千木(ちぎ)の切り口が垂直(外削(そとそぎ))など、内宮とは細かな違いがあるので、玉垣の左によって、この目で確かめてみよう。平成五年十月の遷御では内宮同様、東の敷地へと移った。

御饌殿(みけでん)

 御垣(みかき)内の中、正殿の裏手にあり、一般拝所の右手の板垣からかいま見える。古代の穀物倉の建築様式を伝える床の高い板校倉造(あぜくらづくり)の建物で、神宮の殿舎の中でも特異な造り。この御殿で、毎日朝夕二度、天照大御神はじめ神々に食事が供えられる。

御池(みいけ)

 元々は宮川の支流で、正宮前を流れていたのが、いつしか地震などで埋まって細長い三つの池になったもの。大きなコイが悠々と泳ぎ、参拝者の目を楽しませてくれる。

川原祓所(かわはらのはらいしょ)

 表参道の御池沿い、注連縄を張った中に丸い自然石を三個並べた石積みがある。御池が川であった名残でこの名があり、「三つ石」とも呼ばれる。遷宮の際にはお祓いの儀式が行われる。

亀石

 御池にかかる、亀の形に似た大きな一枚岩の石橋。外宮神域の奥にある高倉山古墳の入口にあった岩とも伝えられている。高倉山古墳は江戸時代には「天の岩戸」と信じられていたところだが、今は入山が禁止されている。

風宮(かぜのみや)「別宮」

 亀岩をわたって左手。内宮の風日祈宮と同じく、農作物の成長に関わりの深い風や雨の順調を祈るお天気の神さま。

土宮(つちのみや)「別宮」

 亀石をわたって右手。外宮域内の地主の神で、宮川の氾濫をおさめる堤防守護の神として尊ばれている。

多賀宮(たかのみや)「別宮」

 土宮の前、九十八段の急な石段を登りつめたところにある外宮第一位の別宮。豊受大御神の荒御魂(あらみたま)を祭り、内宮の荒祭宮と同じく事を起こそうという時はここへという信仰が根強い。表参道に注連縄を張った遥拝所が設けられている。

下御井神社(しもみいじんじゃ)「所管社」

 土宮の奥、板垣に囲まれた小さな杜の中に井戸があり、御井の神を祭る。神職が神々に供える水を汲む上御井(かみみい)神社の井戸が使えないときの予備とされている。上御井神社は外宮奥の藤岡山の麓にあり、一般は立ち入れない。

忌火屋殿(いみびやでん)

 正宮の北にあり、ここで日別朝夕(ひごとあさゆう)に大御饌をはじめ、祭事に神前へ供える神饌を「忌火」で調理する。

御酒殿(みさかどの)「所管社」

 忌火屋殿のとなり、内宮と同じく三節祭に供える神酒が納められる。

御厩(みうまや)

 裏参道の道筋にあり、皇室から牽進された神馬(しんめ)が飼われている。

度会国御神社(わたらいくにみじんじゃ)「摂社」

 裏参道から脇道へ折れ、杉や樟の大木がうっそうと繁る小道を百メートルほど歩くと地元・度会地方の守護神を祭る度会国御神社がひっそりと佇んでいる。

大津神社「末社」

 度会国御神社のさらに奥。もとは五十鈴(いすず)川の河口の守り神として祭られていたが、明治六年、宮域内に再興された。

北御門(きたみかど)

 裏参道への出入口。今では、ほとんどの参拝者は表参道から入るが、昔歩いてお伊勢参りをした時代には、北御門から参入する人が多かったという。

勾玉池(まがたまいけ)

 勾玉の形に似ていることからこの名が残る。池畔には座ってひと休みできる休憩所があり、六月には池畔をハナショウブが美しく彩る。また仲秋の名月の宵には北側の舞楽舞台で「神宮観月会」も催される。池の回りは散策路になっており、南の岸近くには珍木「なんじゃもんじゃの木」も。秋から冬にかけては野ガモが羽を休め、バードウォッチングに訪れる人も多い。

度会大国玉比売神社(わたらいおおくにたまひめじんじゃ)「摂社」

 度会地方の地主の神を祭る。神域の東の外周に沿う県道から入ると、昼でも暗い杜の中に静かに佇んでいる。

伊我理(いがり)神社「末社」

 度会大国玉比売神社の前の石段を登りつめたところに社がある。猪を狩り立てる「猪狩り」が名の由来とか。同座して井中(いなか)神社(末社)もあり、ともに外宮の神田に縁の深い神さまを祭る。

旧豊宮崎(とよみやざき)文庫(旧跡)

 外宮神域の東の端にある国指定の史跡。江戸時代、外宮の神主の学校と図書館をかねた施設があったところで、門と築地塀だけが残る。数多い蔵書は神宮文庫に収蔵されている。春には、塀越しに見事な四本の桜が咲き誇る。この大木は「お屋根桜」と呼ばれ、神宮の萱屋根に芽吹いたものを遷宮の際に下ろしたのが、この地で大きくなったものとか。

外宮の宮域内にある神宮百二十五社

月夜見宮(つきよみのみや)「別宮」・高河原(たかかわら)神社「摂社」

 外宮北御門から北へまっすぐ三百メートル、県道にも接した縁深い一角が月夜見宮。天照大御神の弟神・月夜見尊を祭る。

 三方を堀がめぐっているのは、宮川の支流が近くを流れていた名残とか。宮域内には、土地開拓の守り神・高河原神社もある。

●近鉄・JR伊勢市駅から徒歩3分。

●伊勢市宮後1丁目

田上大水(たのえおおみず)神社「摂社」

 山末神社の東方、こんもりと繁った小さな丘の上に杜があり、度会神主の祖を祭る。回りには濠がめぐらされ、土地の人には「丸山さん」とか車塚とも呼ばれている。御垣内に田上大水御前(みまえ)神社(摂社)も祭られている。

●近鉄・JR伊勢市駅からバス内宮ゆき庁舎前下車 徒歩5分。

●伊勢市藤里町

草奈伎(くさなぎ)神社・大間国生(おおまくなり)神社(摂社)

 JR山田上口駅近くにある草奈伎神社は外宮第一の摂社で、三節祭には由貴大御饌(ゆきのおおみけ)の儀が行われる。大若子命(おおわくこのみこと)が垂仁天皇より賜った標剣伎(みしるしのつるぎ)をここに祭ったと伝えられる。

 境内にある大間国生神社には大若子命と乙(おと)若子命を祭り、大間広(おおまひろ)と呼ばれたこの辺りの開拓の神として尊ばれている。

●JR山田上口駅から徒歩3分。

●伊勢市常盤1丁目

清野井庭(きよのいば)神社

 山田原の一角、清野の灌漑用水の井堰の神を祭る。

●JR山田上口駅から徒歩5分。

●伊勢市常盤1丁目

外宮かいわい

伊勢市駅からオシャレな参道で外宮へ

――――コミュニティー道路――――

伊勢市駅に降り、大通りと平行して、外宮へと続くこの道がコミュニティー道路だ。この神宮参道へ入ると、ビルや店の建物越しに、正面に緑深い杜が見える。外宮へは歩いて5分程。ブティックや喫茶店、雑貨屋、花屋さんと、次から次へとステキな店が現れて、ついつい立ち止まってしまう。真珠店やジュエリーショップも魅力的だ。その合間には、伊勢みやげの店や昔ながらに刃物を扱う老舗も―。

ピンク色の木枠がハイカラな木造三階建ての旅館は、大正時代の建物を昭和初めに改築してという堂々とした構え。木の温もりに惹かれて泊まるお馴染みさんも多いそうだ。もう少し歩けば、外宮の杜が目の前。まずお参りをして、その後ゆっくりコミュニティー道路の散策を楽しもう。

●近鉄・JR伊勢市駅から徒歩5分。

●伊勢市本町

菊一文字本店『まちかど博物館』(ザ伊勢講選定)

 風格のある金文字の看板が目印の刃物の専門店。包丁、ハサミなどが整然と並ぶ。明治十年創業で、戦前までは参宮みやげに刃物を買い求める人が多かったという。天皇家への献上を記した額や、昭和三年に差し上げた御生花用道具なども飾られ、いかにも伊勢で商う店らしさが漂っている。

 TEL0596・28・4933

豊川茜(あこね)稲荷神社

 外宮の勾玉池畔にあり、山田産土神八社の一つ・茜社の境内に、豊川稲荷と菅原天神を合わせて祭る。ズラリと並んだ鳥居は、まるでトンネルのよう…。商売繁盛の神・豊川稲荷には旗や幟がはためき、キツネの置物も所狭しと並んで、信仰の厚さを物語っている。

蓮随山(れんずいさん)の霊水

 外宮の宮域林に隣あう蓮随山は標高約百八メートル。その山腹に梅香(ばいこう)寺(常盤町)の旧境内が残る。そこの井戸から湧き出る水は「観音さんの霊水」と伊勢の人々に慕われ、平癒祈願の水として、また今はの際の「末期の水」に使う習わしがある。宇治山田高校グラウンドの下から登り道が整備されている。

●近鉄・JR伊勢市駅から徒歩30分。 TEL0596・28・3241<梅香寺>

旧参宮街道かいわい

その昔、西から東からお伊勢さんをめざして歩いてきた人々は宮川を渡ると合流して山田の町へ―――。筋向橋(すじかいばし)から外宮への街道はたいそう賑わい、八のつく日に市が立った名残で八日市場(ようかいちば)の地名も残る。当時の面影そのままの建物や道標は、弥次さん喜多さんの頃を偲ばせる。

小西萬金丹(まんきんたん)『まちかど博物館』

 萬金丹は、かって万病に効く「お伊勢さんの霊薬」として参宮客がみやげに持ち帰り、全国に知れわたっていた漢方薬。しかし今では、伊勢で二軒が製造販売するだけとなった。

 旧街道沿いに店を構える「小西萬金丹」は、三百年以上の歴史を持つ老舗。間口十軒もある建物は伊勢独特の「切妻造り」で、戸が開け放たれた店の金文字の看板が風格の高さを物語る。玄関横の部屋には江戸時代からの製薬道具が五十点ほど展示されており、延宝年間の乳鉢、文化年間のじゃこうふるい器など珍しいものが多い。(見学は前もって連絡を)

●近鉄・JR伊勢市駅から徒歩10分。

●伊勢市八日市場町 TEL0596・28・2647

伊勢和紙館『まちかど博物館』

 大豊和紙工業は、伊勢神宮をはじめ全国の神社のお札に用いる和紙を製造している伊勢ならではの会社。今も上質の和紙は昔ながらの手漉(てす)きを続けている。広大な敷地の一部は、江戸時代の御師・龍太夫邸跡。道沿いに石碑と案内板が建つ。事務所の二階が展示室として公開されており、原料のコウゾやミツマタ、和紙、手漉きの道具、作り方のパネルなどが見学できる。(見学は前もって連絡を)

●近鉄・JR伊勢市駅から徒歩10分。

●伊勢市大世古1丁目 TEL0596・28・2359

伊勢和紙人形館『まちかど博物館』

 和紙人形作家の市川桃女さんが自宅をギャラリーとして開放。市川さんが主宰する「桃女会」会員らの作品約100点が飾られ、味わいあるその表情やしぐさに、ほっと心がなごむ。お木曳やお白石持の様子を再現したもの、伊勢神宮の神楽を舞う人形など、伊勢にちなんだものが多い。予約すれば、簡単な製作教室も開いてくれる。

●近鉄・JR伊勢市駅から徒歩20分。

●伊勢市宮町1丁目 TEL0596・28・7018